研究課題
この研究は、冷温帯林での群集レベルのマスティングの要因とその生態的意義を明らかにすることを目的とする。本年度は、1)同一群集内の樹種間の豊凶同調性の観測とデータ解析と、2)林冠部の観測システムの構築をした。1)同一群集内の樹種間の豊凶同調性北茨城の小川試験地では、種子トラップ法による種子生産量と実生観察用コドラートでの実生の発生・生存追跡調査が14年以上継続されている。このうち整備済みの9年間のデータを解析した。その結果、同一群集内において、豊凶の変動レベルが様々な種が存在することが分かった(例えば、ナラなどは毎年比較的安定した種子生産をし、年変動の振幅が小さいのに対し、ブナやアカシデなどは年変動の振幅が非常に大きい)。そして、個体群内での開花同調性高い種ほど、こうした豊凶の振幅レベルが高かった。しかも興味深いことに、分類群の異なる他の樹種間で豊凶年が一致する実態などが明らかになってきた。これらの成果はShibata et al.2002 Ecologyに掲載された。本年度も同様の種子生産、実生発生調査を継続した。これにより、豊凶間隔が長く、個体群動態データが不十分であった樹種についても解析が可能になる。2)林冠部の観測システム花芽の分化時期の特定と受粉率、種子食動物を明らかにするため、ブナなどの豊凶性の大きい樹種から、中間的なイタヤカエデ、豊凶性の小さいコナラについて、それぞれ数個体の林冠部に到達できるような梯子等を設置し、花芽形成から結実に至るまでの過程を枝レベルで観察できるようにした。
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