シロイヌナズナのデータベースの検索によって、シロイヌナズナのゲノム上に、少なくとも30以上の遺伝子ファミリーに分類できる1000種類以上の細胞壁関連遺伝子が存在することを明らかにした。このうち高分子多糖の骨格構造と直接相互作用していると推定される28遺伝子ファミリーに属する762種類の細胞壁関連遺伝子について、各遺伝子を特異的に認識するオリゴDNAチップを作製した。はじめに各遺伝子を特異的かつ高感度で認識するオリゴDNAチップを作製するために、オリゴDNAの長さ、スライドガラスの種類等の検討を行った。その結果、70merのオリゴDNAをポリカルボジイミドコートしたスライドガラスに打ち付けたオリゴDNAチップが最適であることを確認した。このオリゴDNAチップを用いて、シロイヌナズナの花茎伸長や葉の展開時における細胞壁関連遺伝子の網羅的発現解析を行った。花茎伸長や葉の展開に伴い遺伝子の発現が著しく増加する細胞壁関連遺伝子は、それぞれ40種類以上存在していた。この中には、セルロース合成酵素等の合成酵素や細胞壁クリープを引き起こすエクスパンシン、さらには細胞壁の構造タンパク質などをコードする遺伝子が含まれていた。ただし同じ遺伝子ファミリーに属するものはあっても、花茎伸長と葉の展開の両方で著しい増加を示す同一の遺伝子は存在しなかった。このことは、花茎と葉という別々の器官に属する細胞では、細胞伸長時に働く細胞壁関連遺伝子は同一のものではないことを示した。またこのように同定された遺伝子のうち、幾つかの詳細な発現プロファイルをリアルタイムRT-PCR法を用いて解析した。これによって遺伝子発現の詳細な増加パターンを明らかにすると共に、マイクロアレイ解析の精度を検証した。
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