研究代表者はこれまでに、シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803が、光強度の変化に応答し、光化学系I遺伝子のプロモーター活性を大きく変動させることを明らかにしたが、その調節メカニズムは全く分かっていなかった。本研究では光化学系I遺伝子転写調節に関与する因子を同定するために、ランダムにトランスポゾンの挿入を行ったSynechocystis sp. PCC6803のゲノムライブラリーを、psaAプロモーターとルシフェラーゼ遺伝子の融合コンストラクトを持つ株に導入し、弱光下、及び強光下でレポーター活性が通常と異なる株のスクリーニングを行った。これまでにゲノムの約半分の領域についてスクリーニングを終え、正常な強光応答を示すが、通常より弱光下でのレポーター活性が高くなった株を10株単離した。その内、5株はslr0609に、2株はsll1531内にトランスポゾンの挿入が見られた。slr0609、sll1531、slr0551に挿入の起きた株では、弱光下で実際にpsaA、luxAB転写産物量が野性株に比べ増加していた。他の系I遺伝子の転写産物量にも増加が見られたが、系II反応中心をコードするpsbA転写産物量には違いが見られなかった。これら3個のORFは系I遺伝子の転写制御に特異的に働く可能性があるが、全て機能未知であり、現在遺伝子破壊株の表現型解析を進めている。さらに、系I遺伝子上流の調節領域の解析を行うために、psaA、psaDの各遺伝子について転写開始点を決定した。
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