植物ホルモンオーキシンの作用機構の一つとして維管束細胞の分化調節があげられる。本年度はシロイヌナズナを材料に、2つのアプローチを用いた維管束分化に関する遺伝子の単離、解析を行った。1;約5万ラインのジーントラップラインから維管束特異的にレポーター活性が観察される90ラインを選抜し、維管束を含む形態系に以上を示す4ライン、及び、前形成層においてレポーター活性が観察される3ラインを選抜し、詳細な発現解析を行い、これらの原因遺伝子をも単離した。2;道管成熟段階でのみ発現が観察されるXyl::YFP形質転換体を突然変異源処理し、11の突然変異体を単離した。これらは、非維管束細胞においても異所的なレポーター活性が観察された。11突然変異体は4つの遺伝子座にマップされ、現在原因遺伝子の単離を目指している。これらの突然変異体では、異所的にリグニンの蓄積が観察されさらに、RT-PCRの結果、道管分化に関わるAGPやXCP1遺伝子発現が突然変異体において上昇していた。さらに、道管成熟課程の後期に当たるマーカーであるp56::YFPを持つ突然変異体でも異所的な発現が観察され、これらの突然変異体では、非維管束細胞が道管細胞へと異所的に、部分的に再分化していることが示唆された。一方、維管束パターンや、前形成層のマーカー発現は正常であったために、この突然変異体は維管束の成熟段階のみに異常をきたしていることが明らかになった。
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