研究概要 |
本研究では、植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)および浸透圧ストレスにより特異的に活性化されるプロティンキナーゼ遺伝子の機能を明らかにするために、当初RNAiを用いた機能欠損的アプローチを計画した。しかしながら、近年、国際的なシロイヌナズナのゲノムリソースが急速に整備され、各遺伝子の遺伝子破壊変異体が容易に取得可能となったこと、RNAiは、1)ベクターの構築が難しい、2)明確な発現抑制を示すラインが少ない、3)発現抑制効果が後代で低下する、等幾つかの問題点があること、シグナル伝達では、注目するシグナル因子が質的に機能するか、あるいは量的に機能するかは不明であること等から、遺伝子破壊変異体を用いた解析を行なった。本年度は、前年度に明らかにされたSRK2Eの活性化に関わる背景について検討を行なった。SnRK2は、キナーゼドメインの他に特徴的な構造をもった調節ドメインはない。そこで、SRK2EのNおよびC末端を欠いたコンストラクトをシロイヌナズナT87培養細胞に導入し、その活性化における影響を検討した6SRK2Eは、ABAの他に浸透圧ストレスでも活性化されることを前年度明らかにしたが、そのC末端の318〜357アミノ酸配列を欠いたSRK2Eでは、浸透圧ストレスでは正常な活性化を示すが、ABAによる活性化が顕著に抑制された。また、ABA非感受性変異体(abi1-1,abi2-1)におけるSRK2Eの活性化を検討したところ、abi1-1においてABA依存的な活性化のみが強く抑えられた。しかしながら、浸透圧ストレス依存的な活性化は正常であった。これらの結果から、ABAおよび浸透圧ストレスによるSRK2Eの活性化はそれぞれ異なるメカニズムおよび経路により制御されることが示唆された。
|