植物を構成する様々な細胞において、細胞分裂を伴わないDNA複製(エンドリデュプリケーション)が観察される。エンドリデュプリケーションは分化した細胞でのみ観察され、エンドリデュプリケーションによるDNA量の増加に比例して細胞のサイズも大きくなることが知られている。 本研究では、胚軸細胞におけるエンドリデュプリケーションに着目し、胚軸伸長期特異的に機能する細胞周期因子の単離を試みた。研究方法として、植物変異探索研究チームで作成されたアクチベーションタギングラインからDNA量の増加が認められる変異株を単離するという遺伝学的なアプローチをとった。これまでに、約4000ラインについてフローサイトメーターを用いてDNA含量を調べた結果、約250ラインにDNA量の増加が見られた。それらの中から33ラインを次世代に進め、同様の測定を行った結果、6ラインの変異株を同定した。 これら6ラインは、その表現型から2つのグループに分類する事ができた。1つのグループ(グループ1)では、DNA量の増加が胚軸だけでなく、子葉や本葉でも認められた。これら変異株の原因遺伝子は、エンドリデュプリケーションを正に制御している因子ではないかと推測している。これに対し、グループ2では、暗所においてDNA量の増加とともに胚軸の伸長も認められたが、子葉や本葉ではDNA量の増加は見られなかった。このことから、グループ2の原因遺伝子は、エンドリデュプリケーションを介した暗所での胚軸伸長を制御する因子であると考えている。 これまでに、グループ1に分類された1つの変異株の原因遺伝子を特定しており、15年度は、この遺伝子のエンドリデュプリケーションにおける機能を明らかにする予定である。また、他の変異株の原因遺伝子を次年度で同定したい。
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