輸送小胞の3次元分布を解析し3次元モデルを作成し、分布についても定量的に解析する目的で、微細構造の3次元画像解析を行うためにコロラド大学が開発したソフトウェア(iMOD)を動かすため、まずLinuxをベースとするシステムおよびソフトウェアを導入し、電子顕微鏡を用いて取得した画像データを取り込むためのコンピュータ環境を構築した。これはiMODを動かすコンピュータ環境としては、日本で初めての導入である。この電子顕微鏡の技術は動植物の境界を越えて興味を持たれ、日本細胞生物学会のフリーミーティングにおいて講演を依頼された。 次に実際、加圧急速凍結を適用しやすいタマネギ子葉表皮細胞を用いて試料を作成し、間期の細胞表層および分裂準備帯(PPB)を含む細胞表層において微細構造のCTを行い画像を取得した。構築したコンピュータ環境を用いて、小胞の形熊について被覆構造、膜構造、内容物の電子密度、直径などの形態パラメータを分類し定量化するとともに小胞分布の3次元分布をモデル化し解析した。超薄切片も用いた予備的な実験により、PPBに存在する小胞としては、クラスリン被覆小胞(ccv)と、内容物の電子密度が高く被覆を持たない小胞(dv)の2種類があることに気付いていたが、本研究によりPPB領域に見られた2種類の小胞は間期細胞の表層領域にも見られ、いずれの領域においても、dvはccvよりも細胞膜から離れた距離にまで分布していることがわかった。しかし、dvの直径の分布はPPB領域と間期細胞の表層領域において異なっており、いずれの領域においても、dvはccvよりも細胞膜から離れた距離にまで分布していることがわかった。また両者の中間型と見られる小胞や、dvがエンドソーム様の構造に取り込まれていると見られる状態も観察されたことから、dvはccv移行型である可能性が示唆された。
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