【背景】 前年度は、カドミウムとビスフェノールAを用い、in vitroのバイオアッセイ系を確立した。この系により、破骨細胞は非常に高感度(10^<-13>M)でカドミウムに反応し、抑制効果がみられることがわかった。骨芽細胞は、カドミウムで処理することにより、短時間の培養では効果がなかったが、64及び96時間培養ではその活性が低下した。ビスフェノールAは、骨芽及び破骨細胞の活性を抑制し、生殖以外にも骨代謝に悪影響を与えることもわかった。そこで本年度は、以上のようなin vitroの骨細胞に対する作用が、in vivoでも再現できるかを調べると共に、骨硬化ホルモンとのクロストークについても解析した。 【研究成果】 1)カドミウム(10^<-7>M)を含む水でキンギョを4日間飼育し、ウロコの骨細胞の活性を測定した。その結果、ウロコの破骨及び骨芽細胞の活性が低下し、in vitroの結果が再現された。次に、血液中のカルシウム及び骨硬化ホルモン(カルシトニン)濃度を測定し、カドミウムとカルシトニンとのクロストークを調べた。その結果、血液中のカルシトニン濃度は変化しなかったが、カルシウム濃度は低下した。したがって、カルシトニン以外の骨硬化ホルモンとクロストークしている可能性がある。 2)ビスフェノールA(10^<-6>M)を含む水でキンギョを飼育し、ウロコの骨細胞の活性を測定した。その結果、2日後にウロコの破骨及び骨芽細胞の活性が低下し、in vitroの結果が再現された。さらに血液中のカルシウム濃度と共にカルシトニンレベルも低下し、カルシウム代謝に影響を及ぼすことが明らかになった。したがって、カドミウムとは異なった機構で骨代謝に影響を及ぼしていることがわかった。なお、ビスフェノールAの成果は、Zool Sci(2003)及びLife Sci(2003)に発表した。今後、他の重金属や内分泌撹乱化学物質についても調べていく予定である。
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