プロラクチンは多様な作用を持つホルモンである。本研究では、「プロラクチン作用の本質がアポトーシスの抑制および細胞増殖/分化である」という仮説を、広塩性両生魚であるトビハゼを用いて検討する。昨年度までに、トビハゼが淡水、海水あるいは陸上に適応する過程で、各種ホルモンの変動、および消化管におけるアポトーシスと細胞増殖を経時的に解析した。その結果、プロラクチンの発現パターンに伴い、消化管における細胞増殖が淡水中で、アポトーシスが海水適応時に誘導されることを見いだした。本年度は、消化管におけるアポトーシスと細胞増殖を細胞レベルで解析し、以下の成果が得られた。 分裂細胞は、増殖細胞核抗原の免疫組織化学により検出した。免疫陽性細胞は、海水中では哺乳類の腸と同様に陰窩の部分でのみ見られた。しかし、淡水中では上皮全体に散在していた。アポトーシスを起こしている細胞はTUNEL法により検出した。アポトーシス細胞は、淡水中ではほとんど見られない。しかし、海水中では上皮を中心に大体的に同定された。消化管におけるプロラクチン産生細胞も上皮で特定され、プロラクチンとアポトーシス/細胞増殖に空間的にも相関があることが示された。プロラクチンが、アポトーシスの抑制や細胞増殖に関与していることが大いに考えられる。 現在、消化管におけるアポトーシス/細胞増殖のホルモン制御をさらに明らかにするため、ホルモン投与実験を行っているが、コルチゾルによりアポトーシスが誘導されるという予備的な結果も得ている。 今後は、cDNAアレイが開発されている広塩性魚のメダカを用いて、アポトーシス/細胞増殖を分子レベルでも検討してゆく。
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