研究概要 |
ナミアゲハ(Papilio xuthus L.)の蛹には、非休眠蛹および休眠蛹が存在する。休眠蛹には、深緑色(休眠-緑色)型、オレンジ色型および褐-オレンジ色型の体色が存在する。現在までに、この休眠蛹に特有なオレンジ色の体色の発現調節には、前蛹期の後半に頭胸部から分泌される因子の関与が示唆され、休眠蛹の体色をオレンジ色に誘導する因子(オレンジ色蛹誘導化因子,Orange-Pupa-Inducing Factor : OPIF)は、ナミアゲハ短日前蛹の結紮腹部を用いるOPIF活性の生物検定方法の確立により、短日終齢幼虫の中胸-腹部神経節連合体に存在し、ゲル濾過法によりその分子量は、およそ1万Da前後であると推定された。 本年度の研究では、ナミアゲハ短日終齢幼虫の中胸-腹部神経節連合体から、OPIFの精製を試みた。また、カイコガ夏型ホルモン活性物質の精製も試みた。 その結果、Superose-12カラムを用いたゲル濾過およびC8、C4およびC18カラムを用いた逆相高速液体クロマトグラフィーにより、シングルピークを得ることができた。現在、得られたOPIFの精製標品のN末端アミノ酸配列分析の解析中である。一方、カイコガ夏型ホルモン活性物質は、カイコガ成虫の5,000個の脳-食道下神経節複合体より粗2%NaCl抽出液を作製した後、Superose-12カラムを用いたゲル濾過およびC8、C4および2度C18カラムを用いた逆相高速液体クロマトグラフィーにより高純度の精製標品を得たので、現在、N末端アミノ酸配列分析の解析中である。今後、精製を進めるにあたっては、1万個以上のカイコガ成虫の脳-食道下神経節複合体が必要ではないかと考えられた。更に、夏型ホルモン精製材料であるナミアゲハ蛹の脳は、3000個集めた。
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