本研究は、化学合成細菌を鰓内に共生させている深海産二枚貝シンカイヒバリガイとシロウリガイの成長速度を把握することを目的に実施している。そのために、平成14年度は、浅海産二枚貝のアサリを例にして1-2週間の実験期間で高精度に成長速度を把握できる手法の開発を試みた。具体的には、天然環境の数十倍のストロンチウムを二枚貝に取り込ませ、貝殻成長線にストロンチウムが高濃度に蓄積させたマーキングを施し、走査型電子顕微鏡を用いてストロンチウム高濃度域が強反射することを利用して、ミクロンオーダーで成長量を解析する手法(ストロンチウムマーキング法)の確立を行った。 その結果、従来の蛍光色素による貝殻へのマーキング法や標識放流では、蛍光顕微鏡やノギスによる成長量の検出であったため数十マイクロメートルオーダー程度でしか計測できなかったが、ストロンチウムマーキング法では1桁のマイクロメートルオーダーで計測できることがわかった。よって、この手法を応用することにより深海産二枚貝シンカイヒバリガイやシロウリガイの成長速度を高精度に測定できる可能性が高くなった。
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