研究概要 |
これまでのインドネシア側との共同研究により、多様なダニ類のうちハエダニ科ダニ類に関し、スマトラ島、ジャワ島、バリ島などいくつかの主要の島嶼のファウナを明らかにしてきた。インドネシア科学院生物研究所のスリィ・ハルティニ氏が上記以外の島嶼で収集した数多くの標本が、ボゴール博物館に保管されており、今年度はそれら標本の同定作業をハルティニ氏と共同で行った。標本はインドネシアのジャワ,スマトラ、カリマンタン、スラウェシ、小スンダ列島、イリアンジャヤなど幅広い地域から得られたものであり、インドネシアにおけるハエダニ類の多様性解明に必要不可欠な標本である。同定の結果、4属約40種が確認され、これまでインドネシアから記録された種類を合わせると、5属約60種(未記載種約30種を含む)のハエダニ類がインドネシアに生息することが明らかになった。この種数はオーストラリアから報告されている種数とほぼ同じであり、日本、英国の約2倍にあたる。今回の同定結果およびハエダニ類のインドネシアおよび周辺地域での分布データから、1)東南アジア大陸部から小スンダ列島まで広く分布する種が見られること、2)特定の島嶼(例えばスラウェシ島)に分布が限定される種がいること、3)イリアンジャヤのファウナにはオーストラリアとの共通種を含み、インドネシア西部のファウナとは顕著に異なること、などが明らかになった。今後、データを積み重ねていくことで、インドネシア国内のハエダニ類の多様性、生物地理、ウォーレス線の検証などが可能になると思われる。 なお、今年度は未記載種のうち、西ジャワから発見されたNeopodocinum属の新種2種の記載を行い、その共著論文は平成15年中に発行予定である。また、ジャワ島のハエダニ類のファウナに関して、平成14年9月に福井県三国町で行われた第11回日本ダニ学会大会において報告している。その他の未記載種に関する記載論文は、現在投稿中もしくは準備中である。
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