研究概要 |
サプレッションPCR法と磁気ビーズを用いたサフトラクティブ・ハイブリダイゼーション法を併用することにより,紅藻Gracilariopsis lemaneiformisの果胞子体に特異的に発現する遺伝子の単離に成功した。795クローンのうち117クローンが果胞子体プローブとのみハイブリした。さらにリバースノーザンブロット解析によりスクリーニングを行ったところ,少なくとも36クローンのcDNAは果胞子体でのみ発現していることが確認された。これらのcDNAのうち,特に発現量の多かった3つのクローン(carpo1,carpo2,carpo3)について塩基配列を調べたところ,それぞれ全長が1408bp,1543bp,1001bpであった。これらの塩基配列を基に相同性検索(blastX)を行ったが,既知の遺伝子とは高い類似性は見られなかった。carpo1において推定されるORF領域には284アミノ酸残基がコートされており,疎水性の高い部位が2箇所あることから,膜結合タンパクである可能性が示唆された。carpo2はORFを特定できなかった。carpo3において推定されるORF領域には194アミノ酸残基がコートされており,1箇所の疎水性部位が示唆された。これらの遺伝子が他の紅藻類にもコートされているかを調べるために,12対のプライマーを用いて12種の紅藻を対象にPCRを行ったところ,Gracilariopsis lemaneiformisに最も近縁なGracilaria属の1種でcarpo3が部分的に増幅された。しかし,それ以外にはほとんど増幅されないか,全く長さの異なるPCR産物が得られたことから,今回得られた遺伝子は比較的種特異性が高いことが示唆された。
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