研究概要 |
7月に南九州・薩南諸島の計6地域で調査を実施し、計約400点の土壌試料より50菌株のMortierella capitataの菌株を分離した。交配実験・温度適性試験結果は、概ね作業仮説を支持したが、本州でのW群分布可能性の検討のために、新たに最寒月の2-3月に伊豆半島の土壌試料約50点を採集し、培養時の温度、試料の前処理(乾燥・加湿)について培養条件の改良を行った。同改良条件を用い前述、南九州・薩南諸島産試料について改めて分離培養検討を行う必要が生じたことから、次年度も引き続き実施に当たる予定である。 8月に出向した欧州では、本研究遂行上重要な、同種の分類学的背景に関して以下の成果を得た(日本菌学会第47回大会にて発表予定)。(1)M. capitataの原記載地(ベルギー)より得られた同種の4菌株が、日本産同種C群のテスター菌株(交配型A, B ; Degawa & Tokumasu 1997)と良好に反応した。同種のホロタイプ標本欠失が確認され、上記試料に基づきネオタイプ予定標本を作成した(平成16年度の論文で正式に公表予定)。(2)CBS(オランダ)のW.Gams博士の協力を得て欧州7ヶ国で調査をし、約20菌株のM. capitataを得た。うち5ヶ国からの18菌株は日本産C群テスター菌株、及び上述ネオタイプ指定元の菌株と良好に反応したが、W群テスターとは反応しなかった。以上より日本産のM. capitata C群は原記載地周辺欧州の交配群と同一であると結論された。(3)第七回国際菌学会(オスロ大学)では、種内分類群の地理的分布について高等菌類(特に大型担子菌類)を材料とした多くの研究が進行中であることを知り、有益な情報交換ができた。 来年度予定の分子系統解析について3月に、筑波大学菅平高原実験センターにて予備的実験を行った。岩本晋博士(NBRC)に技術面の協力を得て、引き続き解析を進める予定である。
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