本年度の若手研究(B)の成果としては、以下の通りである。 設備費として、申請させて頂いた高流速設定が可能なパーソナルポンプを既存の装置に組み込むことによって、対象有機化合物の高濃度溶液と貧溶媒をY字部で混合させる流通式再沈法のセットアップを構築している。ポンプ性能が良好になり、再現性良く作製するという点においても、全般的な機械性能の向上が見受けられる。具体的には、無置換キナクリドンを対象化合物として取り上げ、ナノ結晶のサイズ・結晶型が完全に制御可能であることが確認されている。また、より実用性の高いことで知られる、ジメチル置換を有するキナクリドン化合物においても、50nm程度のナノ結晶が作製できることが判明した。その他、C60ナノ結晶の作製に関しては、従来、サイズが約40nmのものしか作製出来ない状態であったが、本装置を用いることにより、30-100nm程度のサイズ制御が可能となった。今後、光学特性のサイズ依存性を測定することにより、C60ナノ結晶内のCTエキシトンにおけるサイズ特性を明らかにする予定である。 次年度では、使用する化合物、圧力、温度、溶液の濃度・流量とその比率、Y字混合部の種類、界面活性剤の使用等の条件を変化させて、作製したナノ結晶の構造、形態やサイズ等の制御を行うことにより、本手法の有用性を明示する。また、貧溶媒に金属コロイド分散液等を使用することにより、有機・金属複合ナノ構造体の作製も試みる。
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