研究概要 |
本研究では,2本の多層カーボンナノチューブ(CNT)を十字型に配置した4端子素子構造を作製し,その精密磁気伝導測定により多層CNTにおける本質的な伝導様式を明らかにすることを目的としている. 1.十字路素子作製方法の確立 まず溶媒中に超音波分散したCNTをSiを基板としたSiO_2表面上にスピンコートした.その試料を超高倍率CCD顕微鏡下において,先端径がサブミクロンサイズのガラス製マイクロキャピラリーによるマニピュレーションにより,2本の多層CNTを十字型に配置できることを確認した.この方法を用い,あらかじめ作製しておいた4μm間隔で向かい合った4つのチタン電極の対角線上に2本のCNTを十字型に配置することに成功した.走査型電子顕微鏡による形状評価を行ったところ,各電極上にCNTがまたがっており,また十字型の交差部分の形状を確認することができた. 2.CNTと金属電極との接触抵抗の低減 十字路伝導素子の輸送特性を明らかにするためには,CNTと電極との電気的に良好な接触特性が必要となるが,通常CNTを金属電極上に乗せただけでは表面の汚染層や酸化膜によりショットキー的なバリア接触ができてしまい,オーミック接触をとることが困難である.そこで電極材料としてチタンを用い,CNTとの接触を実施した後に,Ar・H_2混合ガス雰囲気中で700℃・1分間の高速熱アニールによりカーバイト化することで,2端子電気抵抗の1桁以上の低減に成功した. 3.十字路伝導素子の接触特性の評価 上記の方法で作製した十字路構造に対して実際に電流を流し,室温・大気中での2端子電気抵抗測定を行った.その結果,対角線(直線)上の抵抗値は30kΩ程度なのに対し,折れ曲がり抵抗を含むCNT間の端子抵抗は100kΩ程度と十分に測定できることが確認できたが,測定中におけるCNTとチタン電極との機械的な固定が必要であることが,今後解決しなければならない課題として明らかとなった.
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