本研究では液晶ディスプレイ(LCD)用の薄膜トランジスター(TFT)の性能を決定する絶縁膜と半導体との界面制御層の形成に勢力を注ぎ、シリコン集積回路用にも適用できるレベルのLCD-TFT用ゲート絶縁膜を低温で形成することを目的としている。 本年度は、触媒窒化法による極薄のSiNxをSi(100)基板上に形成するための窒化条件を中心に調べた。本窒化処理により、Si基板表面にはSiNx層が形成できることを光電子分光(XPS)法により明らかとした。さらに、触媒体温度(Tcat)とSiNx膜厚の関係を調べたところ、Tcatや窒化処理時間を変化させることで4nm以内の範囲でSiNX膜厚を自由に制御できることも明らかにした。 次に様々な窒化条件で表面処理したSi(100)基板上に40nmのSiNxを触媒CVD法により堆積して金属-絶縁体-半導体(MIS)ダイオードを作製した。それらMISダイオードの容量-電圧(C-V)測定を調べたところ、触媒体温度:1350℃、窒化処理時間:60秒、基板温度:250℃で窒化処理による約2nmの窒化層を導入することでC-V特性のヒステリシスループ幅および閾値電圧シフトを劇的に低減できることを明らかにした。 最後に、窒化層を導入にしたSiNx/Si界面の高分解断面透過電子顕微鏡(HRTEM)観察を行ったところ、窒化層導入により、SiNx/Si界面が平坦化されていることを明らかにした。
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