研究概要 |
AlGaN/AlN中間層を用いたSi基板上GaN系青色・緑色発光ダイオード(LED)は、直列抵抗が極めて高く(約1kΩ)、素子劣化が顕著である。この原因としてSi基板と窒化物半導体間のヘテロ障壁が高いことが挙げられる。直列抵抗低減の指針を得るためには、このヘテロ障壁の高さを定量的に求める必要がある。本LED構造においてSiと接する層はAlNである。そこで、SiとAlNのバンド不連続量の測定を行った。 試料は有機金属気相成長(MOCVD)法により、Si(111)基板上に1180℃にてAlNを2nm, 100nm成長したものを用いた。価電子帯の状態密度の測定はX線光電子分光法(XPS)により行った。特性X線源としてAlK_α(1486.6eV)を用いた。測定精度は±0.2eVであった。 価電子帯不連続量ΔEvは、ΔEv=(Ev-Si2p)^<Si>-(Ev-Al2p)^<AlN>-ΔE_<CL>で与えられる。ここで(Ev-Si2p)_<Si>はSi基板のみの場合のSi2pピーク、(Ev-Al2p)^<AlN>はAlN100nm/Si試料のAl2p、ΔE_<CL>はAlN2nm/Si試料のSi2pとAl2pピークのエネルギー差である。XPSによる測定の結果、(Ev-Si2p)^<Si>、(Ev-Al2p)^<AlN>、ΔE_<CL>の値として、それぞれ97.9eV、70.4eV、24.7eVを得た。これらの値を用いて価電子帯不連続量ΔEvを求めたところ、2.8±0.4eVという値を得た。SiとAlNのバンドギャップ値(それぞれ1.1、6.2eV)を用いて、伝導帯不連続量ΔEcを求めると、2.3±0.4eVという値となった。この伝導帯不連続量はGaAs/Siと比べて極めて大きな値であり、直列抵抗を減少するためにはAlNの厚さを数nm程度にする必要があると結論付けられる。
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