研究概要 |
AlGaN/AlN中間層を用いたSi基板上GaN系青色・緑色発光ダイオード(LED)は、直列抵抗が極めて高く(約1kΩ)、素子劣化が顕著である。この原因としてSi基板と窒化物半導体間のヘテロ障壁が高いことが挙げられる。昨年度の研究において、AlNとSi間の伝導帯不連続量ΔEcは2.3±0.4eVという極めて大きな値であることが明らかになった。直列抵抗を減少するためにはAlNの厚さを数nm程度にする必要がある。本年度は厚さ数nmのAlN層を用いたSi基板上LEDを作製し、特性を調べた。 有機金属気相成長(MOCVD)法によりSi(111)基板上に,LED構造を成長した。1180℃にて成長した極薄AlGaN/AlN(30nm/2.5nm)中間層を介し、20周期のAlN/GaN(5/25nm)多層膜、n形GaN (0.2μm)、15周期のGaInN多重量子井戸、P形AlGaN(20nm)・p形GaN(0.2μm)を順次成長した。半透明p形電極としてNi/Au、エピ面側n形電極としてTi/Al/Ni/Au、Si基板側裏面n形電極としてAuSb/Au電極を蒸着しLEDとした。 X線回折測定の結果、AlN/GaN多層膜構造からのサテライトピークが明瞭に観察され、良好な周期構造と平坦性が得られた。カソードルミネッセンス測定の結果、Inの組成揺らぎを反映した像が得られ、良好な発光特性を有していることがわかった。電流-電圧特性より20mA時の駆動電圧および微分直列抵抗を調べたところ、エピ面側n電極では3.7Vおよび33Ω、裏面側n電極では4.2Vおよび42Ωという値が得られた。エピ面側と裏面側との差は少なく、薄いAlGaN/AlN中間層を用いることにより垂直方向に電流を流した場合の駆動電圧を低減できた。
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