新しい多元系化合物半導体の物性解明と高効率薄膜太陽電池への応用

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14750015
• 研究機関: 佐賀大学
• 研究代表者: 田中 徹 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 助手 (20325591)
• キーワード: 薄膜太陽電池 / CZTS / 多元化合物

研究概要

本研究では、低コスト・高効率薄膜太陽電池の開発が期待されるCu_2ZnSnS_4(以下CZTSと略す)薄膜の作製と物性評価、さらには太陽電池の試作を目的に研究を進めている。本年度は下記の成果が得られた。
(1)ハイブリッドスパッタ法によるCZTS薄膜作製条件の検討
昨年度に引き続き、高品質なCZTS薄膜を得るために、(1)低温でのプリカーサ堆積後、熱処理により結晶化を行う薄膜作製法と、(2)高温での連続堆積による薄膜作製法の2種類を試みた。(1)での薄膜作製においては、熱処理後基板を取り出した際に膜が基板から剥離する現象が見られた。この原因は基板と薄膜との熱膨張係数差によるものと推測された。一方、(2)の高温での連続堆積法ではそのような剥離は観測されず、密着性の良好な薄膜を得ることが出来た。堆積時の基板温度を変化させながら薄膜を作製することにより、ストイキオメトリーなCZTS薄膜が得られる条件を決定できた。
(2)太陽電池窓層としてのZnTe系薄膜の作製と評価
CZTS太陽電池を作製する際の窓層材料の候補の一つとして挙げられるZnTeの作製を行った。薄膜の作製には有機金属気相成長法を用い、原料にはジエチル亜鉛、ジエチルテルルを使用した。種々の成長条件を最適化させることにより、基板温度380℃にて自由励起子発光の見られる高品質なZnTe薄膜を得ることに成功した。また、この高品質な薄膜のフォトルミネッセンスを分析することにより、光学特性を詳細に明らかにした。引き続き、本薄膜成長中に、ヨウ素、塩素を同時に供給することにより、ドーピング効果を調べた。低温でのフォトルミネッセンススペクトルを詳細に分析することにより、それぞれの不純物準位を決定するとともに、ドーピングメカニズムを議論することが出来た。

研究成果

• [文献書誌] Tooru Tanaka: "Effect of Cl ion implantation on electrical properties of CuInSe2 thin films"Solar Energy Materials and Solar Cells. 75. 109-113 (2003)
• [文献書誌] Tooru Tanaka: "Effect of 8MeV-electron irradiation on electrical properties of CuInSe2 thin films"Solar Energy Materials and Solar Cells. 75. 115-120 (2003)
• [文献書誌] Tooru Tanaka: "Growth and optical properties of high-quality ZnTe homoepitaxial layer by metalorganic vapor phase epitaxy"Journal of Crystal Growth. 248. 43-49 (2003)
• [文献書誌] Tooru Tanaka: "Photoluminescence of iodine-doped ZnTe homoepitaxial layer grown by metalorganic vapor phase epitaxy"Journal of Applied Physics. 93. 5302-5306 (2003)
• [文献書誌] Tooru Tanaka: "Photoluminescence of Cl-doped ZnTe epitaxial layer grown by atmospheric pressure metalorganic vapor phase epitaxy"Journal of Applied Physics. 94. 1527-1530 (2003)
• [文献書誌] Tooru Tanaka: "Electroluminescence and photoluminescence characteristics in ZnTe LED fabricated by Al thermal diffusion"physica status solidi. (in press).