本研究では、生体模倣(バイオミメティック材料)を薄膜ナノ構造化、集積化したチップの開発を目的とする。生体模倣材料は、鋳型重合法によって作製する。鋳型重合法は、基質に類似した形の化合物である鋳型分子(認識させたい物質)をその鋳型分子と相互作用するような化合物(機能性モノマー)と共に重合させ、その後に鋳型分子のみを取り除くものである。ここで得られたポリマー材料は鋳型分子の形状と化学的性質を記憶しており、その構造類似体である鋳型分子と特異的に相互作用する。本研究では生体模倣材料の薄膜化に焦点を絞って遂行する。センサーの原理には、表面プラズモン共鳴を利用する。 初年度は、プラズマ重合法により金薄膜表面への生体模倣薄膜の形成を試みた。ガラス基板に50nm程度の金薄膜を形成する。これは、後の表面プラズモン共鳴センシングに必要である。次に、酸素、窒素、ヘキサメチルジシロキサン、アセトニトリルをモノマーとするプラズマ処理を行う。処理時間は、10秒である。その後、鋳型分子であるアトラジンが5mmol、メタクリル酸メチル10mmol、エチレングリコールジメタクリレート100mmolのクロロホルムおよびメタノール溶液などに浸して、10時間放置する。その後、洗浄を行い形成された膜の評価を行った。エリプソメトリーによる評価を行った結果、プラズマ開始重合による膜形成がなされていることがわかった。しかし、屈折率や膜厚のデータから膜は不均一であることがわかった。今後の課題は、均一な膜の作製および分子認識能の評価である。また、今後の表面プラズモン共鳴センシングのため膜の屈折率や膜厚がセンシング感度に及ぼす影響を理論計算で行った。
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