研究概要 |
本研究の目的は、新たな発想のもとで実用に耐えうる性能を有するガス吸蔵材料の開発と評価である。具体的には、カーボンナノチューブ内のナノスケールの空間を利用して、さらに一桁小さいオングストロームの空間を意図的に作りこみ、ガスを物理的相互作用が最も働く距離に閉じ込め強い相互作用を働かせる。空間の作りこみは、チューブ内にさらに物質(有機分子)を詰め込むことによって行う。まず、初年度の目標はカーボンナノチューブ内に物質を内包させる方法を確立し、さらにX線(シンクロトロン放射光を含む)回折、電子顕微鏡、ラマン分光法などを用いて、その構造を明らかにする事にあった。 本年度の研究実績としては、既に報告のあるフラーレン類(C_<60>、C_<70>)はもちろんだがそれ以外にも様々な有機分子のカーボンナノチューブ内への内包を試みた。具体的には、各種リニアアセン類(Anthracene, Tetracene、,Pentacene)、Tetracyano-p-quinodimethane (TCNQ)、Tetrathiafulvalene (TTF)など10種類以上の分子で合成を試みた。合成した物質の構造を、X線(シンクロトロン放射光を含む)回折、電子顕微鏡、ラマン分光法などを用いて検証した結果その全ての物質で分子の内包に成功している事を強く示している結果を得た。以上の様に、新材料を開発する手法を確立するという初年度の目標を達成したと言える。今後は、評価装置を構築しガス吸蔵特性を明らかにしていく必要がある。 上記のガス吸蔵材料としての材料開発だけでなく、ある種の分子を用いるとカーボンナノチューブと有機分子の間で電荷移動が生じる事をあわせて見出した。これにより、カーボンナノチューブへのドーピングが可能でありデバイス材料としての発展の可能性もある。
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