研究概要 |
1)14年度、チオフェン吸着Si(001)2xl表面の光電子分光及び光電子回折実験をつくば市の放射光実験施設PhotonFactoryにて行った。本年度はここでの結果を元に、多重散乱を含む光電子回折シミュレーションを用いた解析を行った。この結果、チオフェンに含まれる硫昔の吸着状態には2種類の異なる状態が存在することがわかった。1つはこれまでいくつかの論文で指摘されている1つのシリコンダイマー上に吸着した2,5-dihydrothiophene (DHT)-likeな構造であり、実験結果とこのモデルを想定したシミュレーションはよく一致した。もう一方は表面上にランダムに吸着した一部もしくは完全に分解した硫黄であると考えられ、光電子回折パターンは検出角度に対して強度変化はほとんどなかった。さらに、シンクロトロン放射光を顔射し続けることで2,5-DHT-likeな構造に相当するS2p成分が減少し、代わって分解した硫黄に相当する成分が増加することがわかった。このことは光によるチオフェンの分解が確認されたことを意味する。 以上の結果は現在Appl.Surf.Sci.紙に投稿中である。 2)研究室保有のX線光電子分光装置を改良し、光電子回折測定を行えるよう、試料回転機構を導入した。2軸回転マニピュレータ及び試料ホルダー部は既に完成し、極角回転、方位角回転ともに動作することを確認した。また、自動計測を行うためには、これまでの市販のソフトウェアでは対応できない。このため、GPIB制御による計測用ソフトウェアを自作した。現在、完全自動計測のために。試料回転用モーター制御と計測ソフトウェアをリンクするための作業を行っている。
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