研究概要 |
近年,ナノ構造体の電気伝導特性を解明すべく,実験,理論計算の両分野で数多くの研究が盛んに行われている.今年度は,本研究で独自に実空間差分法による第一原理分子動力学計算とOverbridging boundary-matching法を用いたナノ構造体の電気伝導特性計算プログラムを開発した.そしてこのプログラムを用い,世界に先駆けて結晶電極に挟まれたナノ構造体やフラーレンの電気伝導特性の解析を行った.計算対象には,Al(001)電極間に挟まれた3個のAl原子からなる単原子鎖と金電極に挟まれたC_<20>分子鎖を選んだ.その結果,Al原子鎖は,(1)引き伸ばしていくとコンダクタンスが電極間距離に対し下に凸のカーブを描く.(2)破断直前にはコンダクタンスが1G_0に量子化されることが分かった.また,C_<20>分子に対しては,(1)C_<20>分子1個を電極に挟むと,電極との接触の仕方(single bonded, double bonded)によってコンダクタンスが変化する,(2)C_<20>分子を2個並べて電極に挟むと、分子の連結部分が大きな抵抗となり、ほとんど電子は流れない.このとき,single bondedの方がdouble bondedよりもコンダクタンスの減少幅が小さいが,これは無限長のC_<20>-single bonded chainとC_<20>-double bonded chainのバンドギャップの違いから説明できる.(3)C_<20>分子を構成するC原子の周りに,環状電流が生じることを発見した.
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