英国(Daresbury Lab.)と米国(ALS)において放射光を利用した光電子分光実験を行った。具体的には、基板の初期再結合条件の依存性、基板のステップ面の角度(=傾きの角度)の依存性、そしてFeの膜厚の依存性を調べた。英国Salford大学において、共同者とともに、新たにMBEシステムの構築を行い、極薄膜の構造と電子状態を調べた。一連の研究から、いわゆるデッドレイヤーを回避しレイヤーバイレイヤー成長の条件を得つつある。特に、ある条件下ではLEED像が消えることなく見え続ける事を見いだしたのは重要であると考える。これら一連の成果の一部は既に発表し、また最新のデータは現在執筆中の論文で発表する予定である。分子研UVSORでは、昨年末のリーク事故のためBL-5Aを使用する事ができず、またその後当該エンドステーションが更新されるため、スピン分解光電子分光装置が佐賀大学に移管された。そのため、日本国内でスピン分解に関する実験がしばらくできない状態が続いており、当面国内においてはスピン積分の実験を行うよう軌道修正を余儀なくされた。分子研では、夏のシャットダウン開けに新型高分解能アナライザーが導入されるため、それを用いて光電子スペクトルの微細な構造を明らかにする事を目指している。香川大学における真空関係は、チャンバー、ターボポンプ、イオンポンプなど基本部分がそろい、超高真空を実現するための作業にかかっている。また、マニュピレータ本体を入手し、現在ラボベースで使用するための設計加工を行っているところであり、近日中に導入できる見通しである。薄膜の磁性を調べるためフォトエラスティクモジュールを購入し、その他は既存のレーザー、ポーラライザー等の装置を利用し、学生と共にMOKE装置の設計を行っている。これを使い真空槽内の試料のMOKE信号の膜厚依存性を測定し、バルク的情報を得ることを目指す。
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