2次非線形フォトニック結晶を用いたフェムト秒光パルスの波長変換

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14750026
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 芦原 聡 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (10302621)
• キーワード: 超短光パルス / 波長変換 / 擬似位相整合 / 非線形フォトニック結晶 / カスケード非線形効果 / パルス圧縮

研究概要

近年の超短光パルスの短パルス化・高エネルギー化は、基礎・応用問わず諸分野に大きな波及効果をもたらした。今後はその波長変換・波形制御という高機能化が加わることで、さらに多彩な応用が広がるであろう。しかし現在の波長変換技術は、「薄い結晶を用いてバンド幅を保つ」という単純なものであり、未熟といわざるを得ない。本研究では、2次非線形フォトニック結晶構造を用いて、超短パルスの第2高調波発生過程の群速度一致を実現するような新しいスキームを提案し、それに基づいてフェムト秒第2高調波発生とカスケード非線形パルス圧縮を実現することを目的としている。
平成14年度はまず、群速度一致条件下における超短光パルスのカスケード非線形効果の測定とそれを用いた光パルス圧縮を行った。長さ10mmの周期分極反転ニオブ酸リチウム素子におけるタイプI擬似位相整合を用いて波長1560nmの基本波と高調波の群速度が一致させカスケード非線形効果の測定を行った結果、非線形屈折率にしてn_2=3x10^<-14>cm^2/Wという大きな値を得た。また、同じ素子を用いてパルス幅110fsの基本波を入射し、最適な位相不整合条件に調整した結果、光ソリトン効果により基本波・第2高調波が同時に約35fsに圧縮された。
次のステップとして、非線形感受率の大きな対角成分を用いて群速度を一致させるスキームを実現するため、ニオブ酸リチウム2次元擬似位相整合素子の設計と分極反転素子の作製を行った。ここでも比較のため、1560nmを基本波とする条件に合わせ周期8.9μmの傾斜周期分極反転パターンを設計した。また、素子の作製は電子線リソグラフィーと電圧印加法を用いた。
来年度はこの素子を用いたフェムト秒パルスの効率的な第2高調波発生と光ソリトン圧縮の実現を目指す。

研究成果

• [文献書誌] S.Ashihara, J.Nishina, T.Shimura, K.Kuroda: "Soliton compression of femtosecond pulses in quadratic media"Journal of Optical Society of America B. 19. 2505-2510 (2002)
• [文献書誌] S.Ashihara, T.Shimura, K.Kuroda: "Group-velocity matched second harmonic generation in tilted quasi phase matching gratings"Journal of Optical Society of America B. (in press). (2003)
• [文献書誌] S.Ashihara, J.Nishina, T.Shimura, K.Kuroda: "Temporal soliton compression in beta-barium borate"OSA Topical Meeting "Nonlinear Guided Waves and Their Applications 2002". NLMA4-1 (2002)
• [文献書誌] S.Ashihara, J.Nishina, T.Shimura, K.Kuroda: "Femtosecond measurement of nonlinear refraction in periodically-poled lithium tantalate"OSA Topical Meeting "Nonlinear Guided Waves and Their Applications 2002". NLMD41-1 (2002)
• [文献書誌] S.Ashihara, T.Shimura, K.Kuroda, N.E.Yu, S.Kurimura, K.Kitamura, J.H.Ro, M.Cha, T.Taira: "Femtosecond pulse compression using cascaded nonlinearities in periodically-poled lithium niobate"The 1st NIMS International conference. March 17-19. (2003)
• [文献書誌] S.Ashihara, T.Shimura, K.Kuroda, N.E.Yu, S.Kurimura, K.Kitamura, J.H.Ro, M.Cha, T.Taira: "Femtosecond cascaded quadratic nonlinearities under simultaneous quasi-phase-matching and group-velocity-matching"Conference on lasers and electro optics(CLEO). June 1-6. (2003)
• [文献書誌] M.Ikeda, S.Ashihara, T.Shimura, K.Kuroda: "Generation of broadband mid-infrared femtosecond pulses with periodically-poled lithium niobate"Conference on lasers and electro optics(CLEO). June 1-6. (2003)
• [文献書誌] 芦原聡, 志村努, 黒田和男, Nan Ei Yu, 栗村直, 北村健二, Myoungsik Cha, 平等拓範: "周期分極反転MgO : LiNbO3素子における群速度整合型フェムト秒カスケード非線形効果"第63回応用物理学会学術講演会. 26p-B-11 (2002)
• [文献書誌] 芦原聡, 藤岡伸英, 志村努, 黒田和男: "非平行型擬似位相整合法によるフェムト秒光パルスの群速度整合第二高調波発生"第63回応用物理学会学術講演会. 26p-B-10 (2002)
• [文献書誌] 池田学, 芦原聡, 志村努, 黒田和男: "周期分極反転LiNbO3を用いた広帯域中赤外フェムト秒パルスの発生"第63回応用物理学会講演会. 24a-YB-3 (2002)
• [文献書誌] 芦原聡, 志村努, 黒田和男, Nan Ei Yu, 栗村直, 北村健二, Myoungsik Cha, 平等拓範: "周期分極反転LiNbO3素子を用いた2次非線形光ソリトン圧縮"第50回応用物理学関連連合講演会. March 28. 28p-YQ-16 (2003)
• [文献書誌] 池田学, 芦原聡, 志村努, 黒田和男: "周期分極反転LiNbO3を用いた広帯域中赤外フェムト秒パルスの発生(II)"第50回応用物理学会学術講演会. March 30. 30p-YQ-2 (2003)