研究概要 |
情報を安全に保管あるいは伝送したい場合,暗号化することが一般的である.しかし,復号後の情報を表示する際の安全性を確保できなければ,どのような暗号化も無力である.情報表示に関するセキュリティ技術を提案し,実現することが本研究の目的である. 平成14年度には,観察領域を制限するディスプレイの原理を実証し,カラーの視覚暗号の構成を行った.画像の暗号を解くための鍵となる復号用マスクを用いて観察領域を制限する情報表示法を提案し,観察領域制限の効果を実証した.限定された観察領域の外からは復号後の画像を観察することができないため,情報の覗き見を防止できる. モノクロ2階調からなる秘密画像の各ピクセルを2×2の補助画素で表現する視覚復号型暗号による表示画像の暗号化と復号用マスクを実現し,表示画像を構成する補助画素の開口比と観察領域の広さの関係を明らかにした. さらに,カラー画像を表示するために,画像の暗号化と表示に用いる視覚復号型暗号コードの多色・多階調化を実現した.表示画像と復号用マスクの各画素を複数の補助画素から構成し,補助画素の重ね合わせで多階調を表現した.光の3原色である赤・緑・青の各色について0から5までの6階調を表現するために,色ごとに10個の補助画素を用いて,各色で6階調,合計で216色のカラー表示を実現した.この方式により,ウェブセーフカラーと呼ばれるインターネットコンテンツ作成の標準色を表現できる.補助画素の数を増やすと暗号化の安全性は高くなるが,暗号の鍵情報が膨大になるため,216色カラー表示に対して,8通りのパターンだけを組み合わせることで6階調を表示できることを見出した.復号用マスクの各画素の色成分ごとにパターンをランダムに選択して暗号の鍵に用いた.秘密画像の画素値に応じて表示画像のパターンを決めて,カラー画像の暗号化と復号を実現した.
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