研究概要 |
情報を安全に保管あるいは伝送したい場合,暗号化することが一般的である.しかし,復号後の情報を表示する際の安全性を確保できなければ,どのような暗号化も無力である.情報表示に関するセキュリティ技術を提案し,実現することが本研究の目的である.カラーの視覚暗号の実証,復号用マスクパターンの複数化と観察領域の複数化,ならびにビットエラーレート分布の解析を行った.画像の暗号を解くための鍵となる復号用マスクを用いて観察領域を制限する情報表示法を提案し,観察領域制限の効果を実証した.限定された観察領域の外からは復号後の画像を観察することができないため,情報の覗き見を防止できる.カラー画像を表示するために,画像の暗号化と表示に用いる視覚復号型暗号コードを前年度よりさらに多色・多階調に改良した.表示画像と復号用マスクの各画素を複数の補助画素から構成し,補助画素の重ね合わせで多階調化を実現した.光の3原色である赤・緑・青の各色について0から6までの7階調を表現し,合計で343色のカラー暗号コードを新たに構築した.従来の視覚復号型暗号アルゴリズムとは異なり,復号相マスクはバイナリ型(透過あるいは遮光)で,情報表示画面には赤・緑・青の3原色が表示される.復号用マスクのパターンが固定されていても,表示画像を換えることで異なる秘密画像を表示可能である.暗号化された画像の復号用マスクを利用して復号画像の観察領域を限定する情報表示法において,鍵となる復号用マスクの盗難やコピーがリスクとなる.そこで,復号用マスクのセキュリティを強化するために,復号用マスクを複数化する秘密情報の分散を新規に実現した.光技術を用いた暗号化はランダム位相物体を用いる方法,フラクタルを用いる方法,偏光を用いたXOR演算を用いる方法など各種提案がなされているが,秘密分散を実現する技術は未だ報告されておらず,復号用マスクの情報を2枚に分散する新規の情報表示を2×2の補助画素を用いて実現した.さらに,暗号化された複数の表示用画像をインターリーブ処理することで,復号用マスクを用いて限定された複数の観察位置を実現する情報表示法を実現し,観察領域をビットエラーレート分布により解析した.視覚復号型暗号というソフトウェア面の技術と立体表示のハードウェア技術を組み合わせることで,セキュアな情報ディスプレイの分野を開拓する点に本研究の特徴がある.
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