研究概要 |
平成14年度から次世代半導体リソグラフィー露光用光源に関する基礎研究を行っている. 平成15年度は平成14年度に使用した希ガスクライオターゲット引き続き用い,レーザー生成プラズマ光源の飛散粒子の詳細な計測を行った.飛散粒子の詳細な計測は,クリーンな光源を実現する上で有益な知見となる. クライオターゲットからの飛散粒子の計測により,以下のような知見を得た. (1)冷却固化ターゲット(Ar,Kr,Xe)にレーザーを照射し,軟X線と同時に放射される高速イオンの速度を観測した.イオンの速度は10^6-10^7cm/s程度であり,この速度はレーザー強度の1/3乗に比例した.このスケール則は,エネルギー平衡の簡単なモデルで説明できた. (2)高速イオンの発生角度分布を計測した.高速イオンはターゲットの法線方向に発生し,角度分布は高次の余弦関数で近似できた. (3)同時に発生する中性粒子の粒径の計測を行った.クライオターゲットは金属バルクターゲットよりはデブリは少ないものの,それでも1μm程度の粒径であることが観測され,これは採光ミラーへの損傷が懸念される. 上述したクライオターゲットの実験ではターゲットの高速供給が困難であるため,高繰り返し動作実験が困難であった.そこで,高繰り返し動作を可能にするためにターゲットの高速供給に着手し,水の連続流体を真空中で安定に供給することに成功した.ターゲット媒質である水はその構成元素である酸素の5価の正イオンが,次世代リソグラフィー露光用光源に要求されている波長に近い13mmの発光があるため,基礎研究には適している.しかし,真空中への水ジェット供給は,真空中における断熱膨張のために急激に冷却され,固化するのが普通である.この問題をターゲット径が数10μm,ジェット速度を数10m/sにすることにより真空中における水の冷却固化の問題を解決することができ,来年度へ向けての研究見通しを明るくすることができた.ターゲットの安定な高速供給が可能になったことにより,レーザーの照射実験を開始し,平成15年度は,発生する極端紫外光の基礎的特性を詳細に観測した.その結果,レーザー光から極端紫外光への変換効率が0.2%程度であることを明らかにした.また,同時に発生するイオン速度のレーザー強度依存性,イオンの発生角度分布を詳細に計測した.今後,超短パルス高強度レーザーを照射することにより大幅な変換効率の向上が期待される.
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