研究概要 |
(1)市販のひずみセンサーを用いた水素ガスセンサーの試作 24×4×0.08mmの薄いガラス基板上にPd合金薄膜を厚さ100nmに真空蒸着し、その裏側にひずみセンサー(東京測器研究所,FLA-5-8-1L)をエポキシ樹脂で接着し水素ガスセンサーを作成した.水素圧力を0.1,1,10,100,600Torrと変化させてひずみセンサーからの信号を計測したところ,水素圧力変化に応じて出力が変化することが明らかになった.しかしながら上記のひずみセンサーは支持材に合成樹脂を使用しており,それ自身が水素ガスを吸蔵してしまいセンサ特性を乱してしまうという問題が新たにわかった.この問題を解決するため,ガラス基板上にCr蒸着により直接ひずみセンサーを作成する方法を検討中である. (2)表面マイクロマシンを用いた片持梁型センサの作成 電気学会の表面マイクロマシン作成サービスを利用して片持梁型水素ガスセンサアレイを試作した.当初ダイアフラム構造を作成する予定であったが,利用できるプロセスでは作成後の処理に問題があり,ダイアフラム構造は容易には実現できないことがわかったためである.作成した片持梁型水素ガスセンサアレイの特性を調べたところ,このデバイスは水素ガスの定量にはあまり向かないが,簡易に水素ガスの存在を知る用途に用いることが可能であることが明らかになった.この結果は2003年3月の電気学会全国大会において研究発表を行っている. (3)理論的検討 Pd合金とガラス及び金属,特にばね性の強い燐青銅合金を用いた水素ガスセンサについて,その動作をコンピューターシミュレーション及び実験を行った.その結果,Pd/金属構造のものよりもPd/ガラス構造のもののほうが水素に対する感度が高いことが明らかになった.しかし,金属を基板に用いたものでは,梁の長さを延長することが容易であるといった別の利点が存在することもまた明らかになった.
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