Nd-YAGレーザーによるアブレーションで生成された粒子を、ECRイオン源内に導入するための装置を開発した。レーザーはパルス幅7nsで繰り返しは最大20Hz、波長λ=1064nmで50mJのエネルギーを持つ。レーザーイオン源用真空容器はターボ分子ポンプによって排気され、最高到達真空度は5×10^<-6>Torrである。レーザーは標的に対して45゜方向から焦点距離f=150mmの収束レンズにより集光される。標的上の収束ビーム直径は0.8mmとなる。開発されたレーザー照射装置の標的上での最大レーザー照射強度は、1.4×10^9 W/cm^2となる。標的として厚さ3mmのCu板を用いてテスト実験を行った。標的には最大±5kVまで加減速電圧を加えることが出来る。標的から420mmの位置にφ8mmのスリットを置き、ドリフト距離500mmの位置に、-400Vの電子サプレッサーを備えた内径10mmのファラデーカップを設置してビーム電流値を測定した。レーザーアブレーションにより発生したプラズマは、標的に対して垂直方向に大きな速度分布を持つ。ここでは加速電圧を数kVまでとして、収束要素の無い場合で500mmのドリフト距離でイオン電流がどの程度得られるか計測を行った。レーザー照射強度1.4×10^9 W/cm^2の時、0.12mAのビーム電流値が得られた。ビーム電流パルスはレーザー照射後13μsでピークを持つ、これは速度として3.8×10^4 m/sとなり、エネルギーで約470eVとなる。加速電圧2kVでは、ビーム電流値が0.51mAとなった。小型レーザーイオン源でも大強度のイオンビームを生成出来ることを実証した。現在、この実験結果を元に、レーザー生成イオンを14.5GHz-ECRイオン源のECRプラズマ中にトラップさせるイオン光学系の設計を進めている。
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