誘電体の光起電力材料としては、バルク焼結体が用いられてきたが、次のような問題点があり、実用的な応用が進んでいなかった。1)出力電圧はkVレベルと高いものの、電流量がnAレベルであるため、静電気分野に応用が限定される。2)光起電力効果が表面近傍のみで起こっており、特性の利用上の出力調整制御が困難である。3)電極間距離がmm以であり、応答性の向上が課題である。最近、提案者らにより、誘電体の光起電力材料を縦型の積層構造体とする検討が行われ、従来はnA程度であった光起電流がμA以上に3桁以上向上し、さらに出力制御も従来のバルク体に比べて精度良く容易に行うことが可能である事が示された。この技術については、基本構造を特許出願し、基本性能については論文投稿を行い著名な国際学術誌(Applied Physics Letters)に掲載が決定している。このような積層型膜構造体では電流量が大幅に向上しただけでなく、その出力制御が格段に容易になった。例えば、出力電圧は膜厚、電流は光の照射面積に比例し、電極間距離が短くなった事により応答性の向上にも寄与することとなり、実用上の大きな利点である。さらに、通常は膜構造化に伴って特性が劣化することが懸念されるが、プロセス上の工夫により、焼結体とほぼ同等の性能を示すことを明らかにした。
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