本研究では、今年度、秋田大学工学資源学部に建設された40T級強磁場パルス磁石を用いた金属材料の磁気測定装置を開発した。本装置は強磁場中での磁化と磁歪を同時にかつ瞬時に測定することができる世界にも稀にみる装置である。磁化測定は、ピックアップコイルを用いた自己誘導法を用い、磁歪測定に関してはマルテンサイト変態等による試料の伸び縮みを無負荷で測定することのできるキャパシタンス法による測定系を開発した。具体的には金属である試料の上面と上部電極との間の静電容量Cの変化を高感度キャパシタンスブリッジGR-1615Aで測定し、出力をロックインアンプを介してデジタルオシロスコープに取込む。磁化については、ピックアップコイルの起電力が微分磁化に相当するので、それを同様にデジタルオシロスコープに取込んで、コンピュータ上で解析を行なった。窒素温度から室温以上の温度の範囲で測定が可能となるように、液体窒素用の真空槽を備えたステンレス製のクライオスタットも作成した。試験として、室温において、鉄(Fe)とフェライト系ステンレスSUS430の磁化及び磁歪を測定した。鉄は僅かなヒステリシスを示す磁化曲線を描いたが、磁歪は極めて小さく、確認することが出来なかった。一方、SUS430は、磁化曲線は1T以下では磁場に比例して直線的に増加し、1T程度の磁場で飽和し一定となった。鉄と異なり、磁化曲線は全くヒステリシスを示さなかった。磁化曲線から、SUS430は磁場誘起強磁性体であると考えられるが、磁場の増減に伴う磁壁の移動は非常にスムースであると考えられる。また、磁歪はブリッジに流れる交流電流を60kHz、20Vp-pとして測定した。磁化にほぼ比例して変化する磁歪も観測された。
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