半正定値計画問題を主双対内点法で解く場合、線形方程式系を計算する必要があるが、多くの場合では係数行列が大規模で密となる。その線形方程式系に対しクリロフ部分空間法を適用すると、反復回数が著しく増大する傾向があることが確認できた。収束性を向上させるため、係数行列が密となる線形方程式系に対する一般的なクリロフ部分空間法の前処理について研究を行い、幾つかの知見が得られた。それらの知見は、研究集会「産業上の非線形計画問題と数値シミュレーションと領域分割法」上で発表した。 半正定値計画問題を解くため、quasi-Newton法という非線型最適化の手法を間接的に利用する方法をソフトウェアとして実装し、計算実験により有効性の検証を行った。その後、それらの結果を第2回日中最適化会議で発表した。 変数の数が1000万以上の半正定値計画問題を解くため、行列補完理論から導かれるクリーク疎分解を利用することが考えられる。その方法をソフトウェアとして実装し、世界中で公開されている半正定値計画問題のソルバーと比較実験を行った。その結果、この方法が効果的であることが確認された。しかし、アルゴリズムとは本質的に関係の無い基本的な演算(行列のかけ算やコレスキー分解など)で、他のソルバーより低性能であることも確認できた。そのため、このような基本演算に対しLAPACKやBLASなどの定評のある数値演算ライブラリーを組み込んだソフトウェアを開発した。さらに、並列計算を行うようにプログラミング中である(なお、最終的なソースコードはインターネット上で公開する予定である)。
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