研究概要 |
本年度は本研究課題に関連して以下の成果が得られた. ・変分不等式問題は凸計画問題を含む広いクラスの問題である.この問題は等価な最小化問題に変換することができる.その等価な最小化問題の目的関数をメリット関数と呼ぶ.これまでにメリット関数は数多く提案されているが,その中でも残差関数はよく用いられている.これまでに残差関数の強圧性(アルゴリズムの大域的収束性に必要)を持つ十分条件として変分不等式問題に含まれる関数が強単調であるということが報告されていた.これに対して,強単調を含む弱強圧性と呼ばれる性質を定義し,その性質の元で残差関数が強圧的になることを示した. ・非線形方程式の解法としてLevenberg-Marquardt(LM)法がある.この手法はニュートン法の変形手法である.最近,研究代表者らは解が唯一でなくてもLM法が2次収束することを示した.本年度は,この結果が制約付き非線形方程式に対して拡張できることを示した.制約付き非線形方程式は化学工学など多くの工学分野に応用問題を持つ重要な問題である.数値実験の結果,拡張されたLM法が有効であることを確認した. ・様々な方向から送られてくる信号(音声,電波等)を多点に分布したアンテナで受信し,その受信された信号から特定方向の信号を抽出することは,信号処理において重要な課題である.この課題に対して,アンテナが等間隔に分布しているときには,凸計画問題に定式化でき,内点法などを用いて効率的に特定信号を抽出することができる.これに対して,アンテナが等間隔に配置されていないときは,凸計画問題が大規模となり,実際に問題を解くことは不可能であった.そこで正確な解を求めることをせずに,よりよい近似解を求めることができる小規模な凸計画問題への定式化法を提案した.また,シミュレーション実験によってその有効性を確かめた. ・DSLなどの多重通信において,他の通信による雑音の影響が大きな問題となる.そのような状況の中で通信できる情報量を最大化する問題は最適化問題として定式化できる.その最適化問題に対して,局所最適解を高速に求めるアルゴリズムを提案した.
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