研究概要 |
本年度は,前年度に引き続き,以下の成果が得られた. ・2次錐相補性問題に対する並列アルゴリズムを提案した.2次錐相補性問題は,凸計画問題のひとつである2次錐計画問題を含む広いクラスの問題である.提案したアルゴリズムが大域的に収束することを示した.また,アルゴリズムの各反復において解かなければならない部分問題を高速に解くアルゴリズムを提案した.さらにアルゴリズムの有効性を数値実験によって確かめた.特に,大規模の問題に対して,既存の手法よりも効率よく解を求めることができた. ・様々な方向から送られてくる信号(音声,電波等)を多点に分布したアンテナで受信し,その受信された信号から特定方向の信号を抽出することは,信号処理において重要な課題である.この課題に対して,アンテナが等間隔に分布しているときには,凸計画問題に定式化でき,内点法などを用いて効率的に特定信号を抽出することができる.一方,アンテナが等間隔に配置されていないときは,凸計画問題として定式化することができないため,最適なアンテナ配置を求めることができなかった.そこで凸計画問題(半正定値計画問題)を繰り返し解くことによって,よりよいアンテナ配置を求めるアルゴリズムを開発した.このアルゴリズムは,大域的な最適解が得られる理論的保証はない.しかし,現実の数値例を用いた教値実験を行ったところ,大域的最適解を求めることができることを確認した. ・DSLなどのブロードバンド通信では,他のユーザの通信による干渉によって,通信性能が著しく劣化することがある.DSLにおいて,個々のユーザの伝送情報量を最大化する電力配分は比較的容易に求めることができる.しかし,あるユーザが電力量を増加させれば,他のユーザの通信に干渉が生じ,その結果,他のユーザの伝送情報量が減少する.そこで,すべてのユーザの伝送情報量を公平に増やす電力配分が必要になる.このような配分問題が非線形相補性問題に定式化でき,その非線形相補性問題が,現実的な仮定のもとで効率よく解くことができることを示した.
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