研究概要 |
本研究課題の目的は,実際上,理論上ともに重要であるパスと木構造の経路における配送スケジューリング問題に対して,多項式的近似スキームの実用性の向上を図ることである.この目的を達成するため,ここでは,計算量と領域量のより少ない近似スキームの構築,また,そこで使われる数学的な技術の計算機上での実装,という2つの観点から多項式的近似スキームの実用性向上を検討している.本年度はまず,すでに得ている多項式的近似スキームについて,理論的にどれだけ計算量と領域量を減少させられるかを検討した.それでもなお実用的には十分とは言えないものの,搬送車台数をmとして,それぞれ仕事数nのm乗以上のオーダーで減少させることができた(投稿準備中).また,近似スキームではないが,搬送車が1台で経路がパスの場合は,メイクスパン最小化および最大レイトネス最小化に対して多項式的な1.5倍近似が可能であることを示した.さらに関連する話題として,配達とは逆に,いくつかの部品を集めてきて組立をおこなう場合の2段階スケジューリング問題を検討し,部品数が2のとき,それが多項式的に1.38倍近似可能であることを示した.これまでのベストな近似比は1.5である.一方,数学的な技術(データの丸め,問題の分割と統合,など)の実用性についての計算実験は検討継続中であるが,関連する話題として,搬送車(あるいは,搬送ロボット)の性能が柔軟生産セル全体のパフォーマンスに与える影響を計算実験により検討した.その結果,全体のパフォーマンスは,搬送速度のより遅い搬送車がボトルネックになっているかそうでないかに依存する,という知見を得た.
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