研究概要 |
ガスタービン翼等の遮熱コーティング用ボンド層であるCoNiCrAlY溶射皮膜の機械的特性の評価を行った.まず,軟鋼とステンレス鋼により作製したハイブリッド基材を硝酸により部分溶融させ,膜厚300μmの皮膜単独試験片を作製した.その皮膜単独試験片を用いて単調負荷応力-ひずみ応答,繰返し負荷応力-ひずみ応答を測定した.減圧雰囲気中溶射(LPPS)皮膜は拡散熱処理を行う(LPPS-T皮膜と称する)ことによって,ややヤング率が低下し負荷時に発生するひずみが大きくなるとともに,圧縮負荷時に僅かに永久ひずみが残留する特異な応力-ひずみ応答を呈することが分かった.これは大気雰囲気中溶射(APS)皮膜と同様の傾向であることが分かったが,APS皮膜の応力-ひずみ応答の非線形性の様に顕著ではなかった.拡散熱処理時に酸化物が成長したため,溶射時に酸化物を多数巻き込んでいるAPS皮膜と同様の傾向を示したと考えられた.また応力-ひずみ応答の非線形性が比較的大きいAPS皮膜でも繰返し荷重を負荷した場合に軟化・硬化挙動は認められなかったが,LPPS皮膜やLPPS-T皮膜でも同様であることが分かった. 次にはく離エネルギをエッジインデンテーション法により評価した.はく離エネルギはエッジ面からの距離および膜厚にほとんど依存しておらず唯一決定できた.APS皮膜とLPPS皮膜でははく離エネルギは同程度であり,はく離強度が同程度であることが分かった.LPPS-T皮膜でははく離エネルギは約4倍にも向上することが分かった.即ち拡散熱処理することによって密着強度が顕著に向上することが分かった. これらボンド層を被覆したステンレス鋼SUS304の高温疲労強度に関しては,LPPS-T皮膜を被覆した試験片がLPPS皮膜やAPS皮膜を被覆した試験片より顕著に長寿命であったが,密着強度の向上が大きな影響を与えていることが分かった.
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