研究概要 |
(1)873K-1h焼なましを行った膜厚100μmおよび30μmの冷間圧延銅膜材の結晶方位を測定した結果,焼なまし後も圧延異方性が残留し,試料法線方向に[101]方位,圧延方向に[111]方位が配向していた.これより,負荷方向と圧延方向の関係によって作動するすべり系が異なることが分かった. (2)いずれの膜厚の場合も,き裂が圧延方向と直交方向に伝ぱする場合の方が,圧延方向と同一方向に伝ぱする場合よりもき裂の一時的な停留が多く長寿命であった.また,膜厚100μmと30μmの膜材を比較すると30μmの膜材の方がき裂の一時的な停留期間が長く長寿命となった.これは厚い膜材ほど膜厚方向の結晶粒数が多いために,その中の変形しやすい結晶粒からき裂が発生しやすいためと考えられる. (3)き裂前方に双晶境界が存在すると,き裂は双晶境界に沿って伝ぱすることがわかった.これは,双晶と隣り合う結晶方位の傾角が他の粒界の傾角よりも著しく大きいため,変形が集中しやすく,また,双晶境界はすべり面でもあるため,すべり変形が生じやすいためである.なお,双晶境界は圧延方向に平行に近い角度で存在している場合が多く,このため,き裂が圧延方向と直交方向に伝ぱする場合よりも,圧延方向と同一方向に伝ぱする場合の方がき裂の屈曲が大きかった. (4)疲労試験前後で,同一箇所の結晶方位をEBSD法で測定した結果,疲労試験後には結晶方位が変化し一つの結晶粒内で結晶方位がばらついていた.き裂が圧延方向と直交方向に伝ぱする試験片と同一方向に伝ぱする試験片を比較すると,き裂の一時的な停留が多く,屈曲が大きい圧延方向と直交方向に伝ぱする試験片の方が結晶方位のばらつきが大きかった.また膜厚100μmと30μmの試験片を比較すると,き裂の一時的な停留期間が長い膜厚30μmの方が結晶方位のばらつきが大きかった.
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