研究概要 |
相変態による振動制御のメカニズムの解明,振動制御現象の発生条件等を検討するためには数値シミュレーションによるアプローチが有効である. マルテンサイト変態のひずみ速度依存性,変態に伴って発生する変態ひずみ及び熱膨張ひずみを考慮した巨視的変態-熱弾粘塑性型構成式を導入した本研究室で既に開発済みの有限要素解析コードを,振動問題が扱えるよう動的陽解法を用いた有限要素解析コードを開発した.開発したコードを用いて,時刻暦応答解析,周波数応答解析,過渡応答解析等,様々な動的振動解析を様々な温度、変形速度条件のもとで行い,逐次データを蓄積した.すなわち,TRIP鋼の固有振動数に等しい強制加振力を外力として加え,変態とともに発生する固有振動数の変化を,温度,変形速度条件による変化を検討した.また,過渡応答解析により,温度,変形速度の変化に伴う振動吸収特性の変化を調査した.このように,その蓄積データを整理することによって,相変態による自己制振および励振効果の発生条件ならびにその発現メカニズムを明らかにした. 加えて,以下の内容の組織形成シミュレーション用基本プログラムを作成した.まず,結晶塑性理論に基づいた変態-弾結晶粘塑性構成式を導出した.それを有限要素法に導入した上で,矩形微視領域を定義し,その領域を正方形セルによりさらに分割する.Gibbsの自由エネルギーを定義し,マルテンサイト相とオーステナイト相の自由エネルギー差がある一定値に達すると変態が発生するという条件を設け,その条件を満たした正方形セルはマルテンサイト相に変態するというルールによりシミュレーションを行うよう作成した.
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