研究概要 |
研究目的は,直径30μm〜0.2mmの微細な銅線の疲労強度評価法の確立,また,疲労強度を向上させる配線形状の検討である.第一年度は銅線の疲労試験を行い,材料力学的な強度評価を行った.スピーカのボイスコイルを利用した疲労試験装置と導電型加振機を利用した疲労試験機を製作した.実際の銅線の受ける振動を模擬して曲げ荷重を用いた.振動の変位をレーザー変位計で測定し,変位一定の疲労試験を行った. 線径(約50μm〜0.26mm)と線の長さ(5〜10mm)をパラメータにして銅線の基本的な疲労強度を得た.実用上の疲労寿命を考慮して一部の疲労試験は2×10^7回まで行ったが,疲労強度は10^7回とほとんど同じであった.疲労限度の振幅は線径に係わらずほとんど一定で,振動の振幅が一定の場合には銅線の直径を大きくしても疲労強度を向上することができないことを明らかにした.引張強さは線径が細いほど高かったが,疲労限度の振幅について材力的に求めた応力は線径が細いほど低くなった.破断部近傍に多数のすべり線が観察され,変形は銅線の固定部にのみ集中していたと考えられた.したがって,上記の応力が引張強さと対応していないのは,応力の見積が線の変形に即していないためである.静的に銅線の変形を計測した結果,銅線は固定部間を直線的に結ぶような変形を示し,線の塑性変形を考慮した応力の推定が必要であることが明らかになった. 次に,はんだ付け部から銅線を取出す角度をパラメータにし,実際の部品における疲労強度の向上を目的とした実験を行った.曲げ応力をねじりに変換することにより,2倍程度の疲労限度の振動の振幅が得られたが,これ以上は頭打ちになった. 次年度ではさらに実際的な疲労強度の向上法と解析的な応力の推定を行う. 上記の一部は,日本材料学会第51期学術講演会講演論文集,pp.285-286に発表されている.
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