| 研究概要 |
昨年度に引き続き,S45C基板上にまずTi薄膜を0.5μm成膜しその上にTiN薄膜を2.5μm成膜したTiN/Ti積層膜と,基板上に直接TiN薄膜を2.5μm成膜したTiN単層膜を作製し,これらの比較によりTiN薄膜の各種特性に及ぼすTi中間層挿入の影響を調べた.その結果,Ti中間層を用いることで,硬さ,じん性を損なうことなく,簡便かつ大幅に密着強度や耐摩耗性を改善できることを明らかにした.一方,この一連の研究では,TiN薄膜の成膜条件は1条件のみで,成膜時のガス圧やバイアス電圧を,種々に変化させた場合にも同様の効果が得られるかについては検討できていなかった.そこで,TiN/Ti積層膜の各種特性に及ぼすガス圧やバイアス電圧の影響を調べることにした.本年度は,これに先立ち,主にTiN単層膜の各種特性に及ぼすガス圧やバイアス電圧の影響を調べた.その結果,ガス圧やバイアス電圧を変化させた際の残留応力の変化は,ガス圧やバイアス電圧の変化に伴うピーニングエネルギーの変化に起因したもので,これらの変化メカニズムは本質的に等しいこと,また,硬さやじん性の変化は残留応力の変化に依存することを明らかにした.さらに,ガス圧やバイアス電圧の変化に伴う密着強度の変化を,ピーニングエネルギーの変化と界面の付着エネルギーの変化に着目したモデルを用いて説明した.今後,TiN/Ti積層膜の各種特性に及ぼすガス圧やバイアス電圧の影響を調べる予定である.
また,TiN被覆鋼の腐食疲労強度に及ぼすTi中間層の影響を調べるために,油圧サーボ疲労試験機に装着可能な腐食溶液槽を作製した.今後,TiN被覆材に対してNaCl水溶液中での腐食疲労試験を実施し,その腐食疲労強度に及ぼすTi中間層の影響を調べる予定である.
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