研究概要 |
本研究では,骨を実際に構成している生体活性なアパタイトを生体内での荷重負荷(リモデリング効果)を利用した応力誘起により生体骨組織をチタン合金表面に創成する生体融和チタン合金を提案すべく本研究を遂行した.すなわち,アルカリ溶液で化学処理を施したチタン合金を体内に埋めると体液と反応し,その表面に骨の無機質に類似したアパタイト層を形成し,骨から生体融和チタン合金へ傾斜構造で変化させ骨結合を強化する手法を提案するものである. 本年度においては,チタン合金表面をアルカリ溶液で表面改質を施し,バイオミメティク法による体内に埋め込むと自分の仲間だと勘違いし拒絶反応が生じない生体骨組織を生体の荷重負荷を利用した傾斜構造で骨析出させる生体融和機能性素材について,以下の点を目的として研究を実施した.すなわち,体内で人工材料が骨と直接接合するための条件は,その表面に骨類似アパタイト層を形成することにあり,その生成・形成メカニズムをリモデリングによる応力誘起のin vitro環境(実験設備)で明らかにする. 結果として,生体の硬組織(骨や歯)を構成する主成分アパタイトの優れた生体組織適合性,骨や歯と直接結合する機能を結合能力に乏しいチタン合金表面にこれらアパタイトを骨へ連続的に変化する傾斜構造で形成させる化学的な表面処理の創成を可能とした.さらに,骨形成の代謝機能に不可欠な荷重負荷(リモデリング効果)による骨の応力誘起機能を複合させたハイブリッドなin vitro環境で明確にした.改質表面で形成されるアパタイトの形成機構とその機能の方向性について,我々の生体骨が有する骨代謝機能を荷重負荷から,骨生成および骨結合を議論する点に意義があると判断できる.生体骨生成・成長の議論に応力を加えた本研究は,人工骨材料の学際領域の研究に対してブレークスルーが期待でき,大いに意義を有すると考えられる.
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