研究概要 |
本研究では,骨リモデリング現象が本来有する階層性に着目しており,特に,海綿骨骨梁における細胞の生物学的応答から構造形成に至るプロセスについて,直接的な解明を試みるものである.本年度は,骨の構造要素形成と力学刺激との関連について以下の検討を行った. まず,骨梁個々の力学特性と,骨梁の力学環境との関連を探るため,牛尾椎体海綿骨の骨梁の微小三点曲げ試験を行った.その結果,骨梁の力学環境は骨梁の力学特性に大きな影響を与えず,骨梁の構造特性のみが影響を受ける可能性が示唆された.次に,海綿骨の骨梁構造について,X線マイクロCTを用いて,その複雑な形態特徴を詳細にモデル化した.ここでは,CTから得られる画像データから,直接的かつ容易に,骨梁構造を詳細に表現したイメージベーストvoxelモデルを作成した.このモデルを用いた大規模有限要素シミュレーションを行い,正常な状態の骨における力学環境と骨構造変化との関連を骨梁構造レベルで明らかとした.さらに,ラット海綿骨に挿入したスクリューが,近傍の骨梁構造に与える力学的影響について検討した.その結果,スクリュー近傍における骨梁の力学環境について,同手法による評価が可能となることが示唆された.一方,これらシミュレーションの高精度化を目的として,voxelモデルに特化した大規模並列有限要素解析手法の提案を行い,そのPCクラスターシステムにおける有効性を示した. 以上の結果から,リモデリングにおける重要な力学刺激パラメータが明らかとなり,今後予定される力学刺激負荷による骨形成の実験モデル構築において,有用な指針を得た.
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