研究概要 |
平成14年度は数十μmオーダの微細形状の転写性について詳細に調べた.具体的には数μmから数十μmの深さを有するさまざまな形状の微細V溝について射出成形実験を行い,微細形状の転写性に与える樹脂物性および分子配向の影響を調べた.まず,表面に微細V溝を加工したコマを金型に装填し,射出圧縮成形法により金型温度等の成形条件を様々に変化させて実験を行った.コマの表面に加工した微細V溝はピッチ4μmから100μmの連続V溝,単独V溝を用意した.また実験には,光学グレードのポリカーボネート樹脂を用いた.実験結果より,流動方向と平行に溝を配置した場合には溝幅が50μm程度と大きいと流動時の繊維配向の影響により比較的深く転写されることがわかった.しかし,溝幅が10μm以下の場合には配向の影響はあまり見られなかった.このことについては,今後物性が大きく変化させられるように樹脂材料を選択し詳細に検討する必要がある.また,V溝のサイズが小さくなるに従い転写率が低くなり,連続V溝と単独V溝の転写率の差が大きくなる.これより樹脂を微視化すると溝サイズと樹脂物性の関係が転写機構に大きな影響を及ぼすことが考えられる. 並行して多層カーボンナノチューブであるVGCFをポリスチレンに混ぜた複合材料中においての繊維配向制御についての予備実験も行った.事前にVGCFとPS樹脂を混練し,それをペレット化することにより射出成形材料とした.結果から射出成形時にほぼ全てのVGCFが流動方向に配向していることがわかった.また,上下の金型の温度を40℃程度変化させると冷却速度の違いから収縮量から差が現れ片面だけ繊維が数ミクロン程度ほぼ垂直に突出することがわかった.今後,機械的に外力を加えて制御する方法について検討する.
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