研究概要 |
高硬度材である金型用超硬合金は,ボルトホーマーやシャーなどの金型に用いられており,正確な形状を得るため,フライス加工や旋削などの切削加工が生産行程に含まれている.一般に,金型用超硬合金を切削すると,激しい工具損傷が生じることが問題となっていることに加えて,推奨切削速度が20m/min程度の低速であることなどが分かっており,生産効率が悪く,これがコストの上昇にもつながり,生産現場では解決策を模索しているのが現状である. 平成14年度においては,超硬合金切削時の基本特性を調べるために,旋削時の切削抵抗および工具摩耗量の測定を行った.切削抵抗測定のために,背分力が非常に大きい切削となる超硬合金に適した工具動力計の作製も行った.被削材としての超硬合金には,Co含有量がおよそ12%であるG4と19%であるG7の2種類を用いた.切削条件は,切削速度は15m/min,切込みは0.1mm,切削送りは0.1mm/revである.また工具には,市販されている焼結ダイヤモンド工具(DX140,東芝タンガロイ社製)を用いた.超硬合金切削時に生じる摩耗は,逃げ面摩耗が主であり,すくい面の摩耗はほとんど観察されなかった.逃げ面摩耗幅が0.3mmに達した時を工具の寿命とした場合,工具寿命に達するまでの切削距離はG4では150m, G7では230mであった.工具摩耗生成機構としては,工具逃げ面をWC粒子が擦過することにより生じるが,この工具摩耗量の差はWC含有量に起因していると考えられる.この工具摩耗生成機構については,SEM内二次元切削のよるその場観察を行うことにより,工具逃げ面をWC粒子が擦過する現象を調べた.今後は,他の切削条件についても同様の旋削実験を行い,焼結ダイヤモンド工具を用いた場合の基本切削特性を調べるとともに,バインダレスcBN工具を用いた場合の切削特性との比較を行う.
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