研究概要 |
炭化物粉末を,鉄,コバルト,ニッケルなどの鉄系金属を用いて焼結結合した合金である超硬合金は,高硬度であり耐磨耗性に優れ,圧縮強さも高いなど優れた機械的特性を有した材料である.この材料は,切削工具用途だけでなくダイス,ビットなど広く使用されている.これらが製品化されるときには,製作工程中仕上成形の段階でほぼ製品形状となり出荷されることが一般的であるが,時に特殊形状が求められるときには仕上加工が施される.この仕上加工には研削,研摩が多く用いられているが,加工能率が悪く生産コストがかかるという問題点が挙げられている.また,粗加工の段階において中ぐりなどの機械加工が行われることもあるが,激しい工具摩耗が生じることが問題となっている.そこで,平成14年度においては超硬合金切削時の基本特性を調べ,工具摩耗生成機構について検討を行った.被削材にはV30およびV50を,工具には焼結ダイヤモンド工具を用いた.切削条件は,加工現場で推奨されている条件と同様にし,得られた結果は前年の報告の通りである.平成15年度においては,バインダレスcBN工具による旋削を行い,前年度のデータとの比較検討を行った.また比較のため,従来から使用されているcBN工具も使用した.バインダレスcBN工具は,従来のものと比べ刃立ち性が良く,高硬度であることから,すくい面側の摩耗が非常に少なく,逃げ面側の摩耗,加工面粗さについてもほぼ焼結ダイヤモンド工具と同程度のものであった.逃げ面側の最大摩耗幅から得られる工具寿命は,焼結ダイヤモンド工具より良好であった.まだ,検討段階であるが超硬合金の工具への付着がバインダレス工具の場合非常に少なく,機械的な摩耗だけでなく,付着脱落による摩耗が大きな原因になっていることが明らかになった.しかしながらバインダレスcBN工具を用いた旋削では削り残しが多く,仕上面精度の観点からは問題が残った.
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