研究概要 |
小形の部品や金型を高い精度で加工するために,数十nmの精度と数十mmのストロークとを有する送り駆動系が必要となっている.このような性能を持つ送り駆動系は,ボールねじところがり案内とを用いた機構をACモータで駆動する粗動に圧電素子による微動を組み合わせて実現されている.しかし,機構が二つあることから構造が複雑になり制御が難しく装置も大きくなる. ころがり要素を用いた粗動に微動を組み合わせる理由は,鋼球のころがりの非線形挙動の影響で粗動の精度が1μm程度しか得られないためである.しかし,この挙動はすでに解析されていること,また,ACモータを制御するロータリエンコーダの分解能が飛躍的に向上していることから,ころがり要素の非線形特性を考慮した制御系が設計できれば,微動機構を用いることなく一つの機構で数十nmの精度と数十mmのストロークとを持つ送り駆動系が実現できるのではないかという着想に至った. これまでに送り駆動機構,制御装置の設計,製作を行い,間もなく実験が開始できる状態である.予備実験として従来のACサーボモータ(65536 パルス)の微小回転時の挙動を調べた結果,直線変位に換算して50μm程度の大変位では問題なく運動した比例ゲインを用いて0.5μm程度の微小変位を行うと運動せず,微小変位時にはゲインを高くしないと運動できないことが確認できた.原因は摩擦等の非線形挙動の影響と考えられる.今後,設計した機構に取り付けるACサーボモータ(131072パルス)で同様の実験を行い微小回転時の挙動について解析し,補償法を検討する.なお,関連する研究として,摩擦補償の新たな方法および誤差情報を利用した送り駆動系の制御法を考案したので,別紙に示すように講演を行った.
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