本研究では炭酸ガスが溶解した冷凍機油の潤滑下で、点接触EHL油膜内の炭酸ガス冷媒溶解濃度の2次元分布を顕微FT-IRで測定し、炭酸ガス冷媒雰囲気中の弾性流体潤滑特性を明らかにすることを目的とする。今年度は、申請者がこれまでに開発した「フロン系冷媒雰囲気中EHL油膜観察装置」をベースとして、今回新たに高圧の炭酸ガスに対応した「炭酸ガス冷媒雰囲気中EHL油膜観察装置」の設計及び製作を行った。 本装置はボールオンディスク型のしゅう動試験機であり、ボールには軸受用鋼球、耐圧窓を兼ねるディスクにはサファイアを用いた。炭酸ガスを用いた冷凍サイクルでは非常に高圧な超臨界状態になるため、試験部を収める圧力容器の使用最高圧力は10MPaとして設計を行った。また、装置で使用する最高ゲージ圧P(MPa)と内容積V(m^3)の積が0.004を超えると、高圧ガス保安法によって規定された第一種圧力容器となり、設計や製造時に数多くの審査が必要となって装置の完成までに非常に時間が掛かるため、内容積が400cm^3以下となるように配慮した。圧力容器内の鋼球はマグネットカップリングを介して外部に設置したサーボモータにより回転し、鋼球とディスク間のしゅう動部への潤滑油の供給は、試料油の付着した鋼球が回転することによって行われる。また、一度しゅう動部を通過して鋼球表面に形成されたEHL油膜を掻き落とし、新しい油を鋼球表面に付着させるために、圧力容器内の油槽にスクレーパーを設置した。 今後、本装置の耐圧試験や予備実験を行い、次年度は荷重、すべり速度、冷凍機油の粘度等の潤滑条件がEHL油膜内の炭酸ガス溶解濃度分布に与える影響について調べる。
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