円筒状のシンプルな形状をステータとして、これを空間的な位置および駆動パターンの位相を適当に設定した圧電素子で励振する。その結果、ステータにたわみ進行波が発生し、それと同じ進行方向に音響流が生じる。その結果、音響流の径方向流速勾配によって、ロータが非接触で回転する。本年度は、ステータにたわみ進行波を発生させると同時に。圧電素子の変位量を制御することで、ロータの非接触微小位置決めの可能性を確認した。 非接触超音波モータは、ロータ、薄肉円筒の弾性ステータおよび4つの圧電素子から構成される。ロータの外径は70mmであり、ステータとのすき間は10μmである。ステータは、内径約70mm、肉厚2mmおよび高さ30mmであり、これを薄肉円筒と仮定すれば、理論的に8次のたわみ振動モードに対して共振周波数は24kHzとなる。一対の圧電素子をy方向に対して11.25°だけ空間的位相をずらして配置し、さらに駆動パターンの位相も90°だけ進める(遅らせる)と、円筒の周方向たわみ振動の進行波励振条件を満足する。実験の結果、圧電素子に駆動周波数22.9kHz、片振幅5Vの交番電圧を印加した場合、振幅1.5μm程度の進行波が発生した。非接触超音波モータを駆動させた結果、回転速度はおおむね1rpm程度であるが、特定角度において回転速度が低下することがわかった。しかし、導通試験の結果はローターステータが接触しているとは考えにくく、今後原因追及が必要である。さらに、一対の圧電素子を同一方向に微小変位させることで、ステータ全体を微小送りさせた。その結果、ロータを非接触で回転・支持したまま、0.15μmの微小ステップ送りが確認され、本手法の可能性が見いだされた。
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